お口の病気とケア歯科全般

糖尿病と歯の健康との関係

糖尿病と歯の健康との関係

私たちの歯は、毎日の歯磨きなどのセルフケアなどがしっかりとできていないことで、虫歯や歯周病になってしまいます。中でも歯周病は、歯と歯茎の隙間の歯周ポケットと呼ばれる場所から、さらに奥深くの歯の神経である「歯髄」にまで進行してしまいます。この歯髄には、神経の他にも血管やリンパ管、神経線維などが通っており、歯に酸素や栄養を供給する役割を持っています。この歯髄にまで歯周病菌が進行してしまうことで、血管に侵入した歯周病菌は、血液と共に全身に運ばれてしまいます。そのため、全身疾患などの病気を発症させたり、症状を悪化させてしまう危険性があるのです。特に全身疾患の糖尿病は、歯周病と大きな関係性があるのです。

糖尿病とは

食べ物の炭水化物などに多く含まれる糖質は、ブドウ糖(血糖)に分解されて細胞に吸収されるため、血液中のブドウ糖が増えてしまいます。その際に、膵臓から出るホルモンである「インスリン」の働きによって、ブドウ糖を体に吸収することでエネルギーに変わります。インスリンによって、血糖値を一定の範囲内におさめることができているのです。しかし、インスリンの分泌が減ったり、その働きが低下したりすると、血液中のブドウ糖が体内に十分に吸収されず、血液中を流れるブドウ糖が必要以上に増えてしまい、慢性的に血糖値が高くなってしまいます。これを糖尿病といいます。血糖値が何年間も高いままで放置されてしまうと、血管が傷ついてしまい、心臓病や失明、腎不全、足の切断などの、より重い疾患を将来的に引き起こてしまう危険性があります。また、急激に血糖値が上昇してしまうと、それだけで昏睡などを起こす危険性もある病気なのです。

糖尿病と歯周病の関係

・糖尿病が歯周病のリスクを高くする

糖尿病によって高血糖の状態になることで、身体が糖を体外に出そうとするため、多尿になってしまいます。それによって、喉の乾きや口腔内が乾燥しやすくなってしまうため、唾液の分泌量が減ってしまい、唾液の浄化作用や殺菌作用の働きが低下してしまうことで、口腔内に歯周病菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。さらに、高血糖状態が続くことで、免疫細胞である白血球の働きが低下してしまうため、免疫力が落ちてしまい、歯周病菌に感染しやすくなります。そのため、糖尿病の方は歯周病のリスクが高くなってしまうのです。

・歯周病は糖尿病を発症・悪化させる

歯周病によって歯周ポケットから出血や膿が見られる場合、歯周病菌が作り出す炎症性物質(サイトカイン)が、血管を通じて全身に運ばれています。この炎症性物質によって、血糖をコントロールするインスリンの働きが妨げられることで、インスリンが効きにくくなります(インスリン抵抗性)。そのため糖尿病が発症したり、症状が悪化してしまう可能性があるのです。

・歯周病治療で血糖値が下がる

近年、歯周病を治療をすることで、血糖コントロールが改善するということが分かっています。歯周病と糖尿病は密接に関係していることから、ご自身での適切な歯磨きなどによるプラークコントロールをしっかりとおこない、さらに歯科医院での歯のクリーニングなどで、炎症の原因となっている歯垢や、歯石をスケーリングやPMTCなどによって確実に取り除くことが重要です。口腔内を清潔な状態にすることで、歯茎や歯周ポケットの炎症を抑えることができれば、インスリン抵抗性が改善するため、血糖コントロールも改善にも繋がるのです。しかし、全ての症例で血糖値の低下が生じるというわけでもないため、現在でも糖尿病と歯周病に関する研究がおこなわれています。

糖尿病も歯周病と一緒に治療しましょう

糖尿病は歯周病の発症のリスクを高くしてしまい、歯周病は糖尿病を発症させたり症状を悪化させるため、糖尿病も歯周病と一緒に治療することが大切です。

糖尿病の治療や予防には、生活習慣の改善が欠かせません。そのため毎日の食事では、野菜を先に食べることで、血糖値の急激な上昇や食べ過ぎを防ぐことができるため、意識して先に摂るようにしましょう。また、早食いの癖がある方も改善が必要です。食べる速度が速いと、満腹を感じる神経の満腹中枢を刺激するまでに沢山食べてしまうので、しっかりと噛みながらゆっくりと食べるようにしましょう。しっかりと噛むことで、唾液の分泌を促すこともできますし、脳内の満腹中枢が働き満腹感を感じるので、食べ過ぎを防ぐことができます。さらに運動をすることも効果的です。運動によって体を動かすことで、血液中のブドウ糖が筋肉に取り込まれるため、血糖値が下がります。そのため、運動の習慣がつくと、インスリンが効きやすい体質になることも分かっています。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動や、腕立て伏せや腹筋、スクワットなどの筋力トレーニングの両方をおこなうことで、血糖値をより効果的に下げることができるのです。

まとめ

糖尿病の合併症として「網膜症」「腎症」「神経障害」「心疾患」「脳卒中」に次いで「歯周病」は6番目の合併症としてとらえられるようになりました。そのため、歯周病を予防することで糖尿病の改善にも繋がります。また、糖尿病と歯周病は、不規則な生活習慣や喫煙などによって悪化してしまうため、普段の生活習慣の見直しをおこなうこともとても大切なのです。

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