矯正歯科の知識

大人になってからの矯正歯科治療

大人になってから始める歯列矯正治療

歯列矯正治療は、子供の頃におこなう歯科治療というイメージを持っている方が多くいらっしゃいます。しかし、大人になってからでも歯列矯正治療をおこなうことはできるのです。歯や顎の骨が成長過程にある、子供の頃に矯正治療をおこなうことは、顎の骨の成長を利用した治療ができるので、よりスムーズに歯を正しい位置に整えることができます。それに比べると、大人の歯や顎の骨は成長が終わり定着しているため、子供の矯正治療よりも時間がかかりますが、大人になってから始めることで多くのメリットがあります。さらに近年では、歯への意識が高くなってきたこともあり、大人になってから審美的な目的での矯正治療を始める方も増えているのです。

大人になってから始める歯列矯正治療のメリット

・虫歯や歯周病になるリスクが減る

歯並びがデコボコしている箇所や、歯が重なっているような箇所は、食べカスや歯垢(プラーク)などの汚れが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。しかし、歯列矯正治療をおこない歯並びを整えることで、歯の隅々まで歯ブラシが行き届き、汚れを除去しやすくなるので、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができるのです。毎日のご自身の歯磨きをしっかりとしているのにもかかわらず、虫歯や歯周病になりやすい方は、歯並びを整えることで改善される場合があります。

・コンプレックスの解消に繋がる

歯並びが悪いということを、コンプレックスに感じている方も少なくありません。出っ歯などの不正咬合の方は、歯を見せて笑うことができなかったり、人と話すときに歯を見せることに抵抗を感じてしまい、無意識に手で歯を隠してしまうようになることもあります。しかし、歯列矯正治療によって歯並びがキレイに整うことで、コンプレックスになっていた根本的な原因が解消されるので、周囲の目を気にすることなく自然な笑顔で笑えるようになるだけでなく、考え方も前向きになったり性格が明るくなるなど、心の健康にもに良い影響を与えることがあるのです。

・将来的に歯を失った場合に良い状態で補綴物が使用できる

加齢に伴い、歯を失ってしまうことがあります。その場合は、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの補綴治療をおこない、歯の機能を回復させるのですが、歯を失った箇所に補綴物を装着する際に、不正咬合に比べて歯並びが整っている方が補綴物を装着しても壊れにくく、しっかりと噛める場合が多いです。

・咀嚼力が向上する

不正咬合は咀嚼力を低下させるため、唾液の分泌が減ってしまいます。唾液が十分に分泌されないと、食べ物が消化されにくくなり、胃腸などの消化器官に大きな負担がかかってしまい、さらに代謝機能や免疫力も低下することで、体の健康を保つ機能全体の低下に繋がってしまいます。しかし、歯並びを整えることで消化器官への負担も軽減するので、全身の健康にも良い影響を与えます。

・発音や滑舌がスムーズになる

うまく発音できない音があったり、滑舌が悪いことは、歯並びが大きく関係している場合が多いです。歯並びが悪いことで歯と歯の隙間から空気が漏れたり、唇をうまく合わせることができないことがあるため、特定の発音ができなかったり、舌っ足らずな話し方になってしまうのです。話し方も、その人の印象を左右する大事な要素なので、歯並びが整うことで正しく話すことができるようになると、印象が良くなることがあります。

大人になってから始める歯列矯正治療のデメリット

・治療の際に痛みを伴う

大人の歯は、乳歯と比べてしっかりと歯の位置が定着しており、その状態から歯を動かしていくことになります。そのため、治療開始時はかなり強い痛みを感じる場合が多いです。しかし、痛みは徐々に治まっていきますが、痛みが我慢できない場合は痛み止めなどを服用して対処しましょう。

・移動が完了するまでに時間がかかる

子供の矯正治療に比べると、矯正して動いた歯が元に戻ろうとする「後戻り」の力が加わりやすいです。矯正治療後は、装置によって動いた歯列がしっかりと定着するように、リテーナーという保定装置を装着する「保定期間」が必要になりますが、子供の矯正治療よりも長い期間を要することが多いです。また、保定期間中は通院も続くので、費用も多くかかってしまいます。

・治療計画が立てやすい

大人の歯列矯正治療は、歯や顎の骨格の成長が終わっているため、成長過程の子供のように予測していないことが起こるケースがほとんどないので、治療計画が立てやすくスムーズに治療をおこなうことができます。

歯列矯正治療の種類

・ブラケット矯正

もっとも一般的な矯正治療方法で、金属製のブラケットという装置を歯の表面に装着して、ワイヤーを通して引っ張ることで歯を動かしていきます。様々な症例にも対応可能な治療法ですが、装置が目立ちやすいというデメリットもあります。その場合は、装置を歯の裏側に装着する舌側矯正(リンガル矯正)という矯正方法もあり、目立ちにくい矯正治療を受けたい方にはお勧めの治療法です。

・マウスピース矯正

透明なマウスピース型の装置を歯に装着して、定期的に動いた歯に合わせて新しいものと交換していくことで、徐々に歯を整えていく矯正治療です。装置が透明で歯にフィットしているため、目立ちにくく周囲に矯正治療をしていることが気付かれにくいというメリットがあります。さらに、ご自身で取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に取り外すことで普段と同じようにおこなうことができるのも大きなメリットです。

ただし、計画通りに歯を動かすためには、装置を決められた時間装着することが必要となるので、長時間外していたり、着け外しを繰り返してしまい装着時間を守れないと、歯が効果的に動かないだけでなく、マウスピースが歯に入らなくなってしまうことがあるため、注意が必要です。

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