歯は硬い骨の中に生えていますので、一見、じっとして動いているように見えませんが、ヒトの歯は生涯動き続けています。硬い骨の中で乳歯が出来あがり、生後半年くらいには、乳児の歯が初めて生えてきます。そして、大人の歯は六歳頃から生え始め、12~13歳頃には永久歯が生えそろいます。そうなった後、さらに思春期以降まで、上顎骨や下顎骨の成長が続き、継続的に歯の位置は変化して行きます。そして、成人に達し、生涯が閉じるまで、歯は少しずつ伸び、少しずつ前へ前へと動いて行きます。
人が毎日、絶えず呼吸をしたり、食べ物を噛んだり、飲み込んだり、話しをしたりする生理的な口の運動と、成長や加齢による変化で、歯並びと噛み合わせの変化が起こり、このようにして、若い時には良い噛み合わせであったのに、徐々に受け口になってきて、そのことに年を重ねてから気づいたりもします。
歯は硬い骨の中に生えていますが、その根の周りに軟らかい歯根膜という組織があり、歯の移動に関係します。ここには、骨やセメント質を生成する細胞に分化できる細胞が含まれていますが、近年、歯根膜細胞の中に骨、軟骨、脂肪組織そして神経組織などに分化する能力を持つ幹細胞が存在することがわかりました。現在は、この歯根膜幹細胞を用いて、歯や歯の周りの組織を再生する研究が進んでいます。